今回は、2025年5月8日に決算発表があったトヨタ自動車<7203>について、足元の状況から今後を考えていきたいと思います。トヨタは、やはりアメリカのトランプ関税の影響を大きく受ける会社です。今期にどのような影響がありそうか、そして長期的にどうなっていくのか、考えていきたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
直近の決算と過去の業績推移
直近で発表された2025年3月期の決算では、売上高は前年の6%増だったものの、営業利益は前年から10%減、当期純利益は約4%弱の減少となりました。
売上は伸びているものの、世界的なインフレにより原材料価格などが高騰し、コスト増が利益を圧迫した形です。
過去数年の業績推移を見ると、2023年、2024年、2025年と売上規模、利益率ともに高まってきていました。特に、2024年3月期は最高益を記録しています。この背景には、円安の好影響に加え、ハイブリッド車の販売が好調だったことが挙げられます。
<ハイブリッド車の再評価と米国市場>
欧州や米国ではEV(電気自動車)へのシフトが進むかと思われましたが、経済合理性の観点から、EVよりもハイブリッド車が良いのではないかという機運が高まりました。これにより、トヨタは存在感を増しています。
特に米国市場では、広大な国土ゆえにEVの充電インフラが課題となる中、燃費の良いハイブリッド車が、環境にも財布にも優しい選択肢として評価されています。プラグインハイブリッド車は、数年で燃費向上によるコストメリットが得られるとも言われており、ユーザー視点での経済合理性の高さが評価されているようです。
今期の業績見通しを圧迫する要因
しかし、2026年3月期の決算見通しを見ると、営業利益が前期から約1兆円近く減少する見通しとなっています。
今期の決算見通しで営業利益が大きく減少する要因はいくつかあります。
- 為替の円高想定:今期の想定為替レートを前期よりも8円ほど円高の1ドル145円と設定していること
- 原材料価格の上昇:原材料価格が高止まり、上昇し続けると見込んでいること
- 米国での関税:いわゆるトランプ関税による影響
特に懸念されるのが、(3)の米国での関税影響です。見通しには、ひとまず4月と5月だけの影響を暫定で計上しており、この2ヶ月だけで1,800億〜1,900億円ほどのマイナス影響を見込んでいます。もしこの関税が6月以降も続けば、さらに業績が悪化する可能性があります。